東濃出身の山本芳翠(ほうすい)(1850~1906年)は、今から140年ほど前にパリへ行き、西洋における伝統的な油彩画の技法を習得して日本に「洋画」をもたらした郷土の偉人である。芳翠はフランスで国立美術学校教授だったジャン・レオン・ジェロームに学んでいる。今回の所蔵品による企画「ルドンと日本」では、オディロン・ルドンと共通のジェロームを師とする芳翠の作品を展示することにした。西洋において絵画として描かれてきた女性美を追求した「裸婦」(国重要文化財)や、日本の御伽草子(おとぎぞうし)に着想を得た「浦島」などの名品とともに、画家としての天賦の才を感じさせる「若い娘の肖像」を並べて壁に掛けた。
この作品はフランスの画家イポリット・フランドランによる作品の模写で、芳翠はルーヴル美術館でこれを描いた。対象を見て描くという点において、模写は人物デッサンと並ぶ技術習得の方法である。絵を写し取ることは、画家として物の見方を学ぶことであり、画材の特性やさまざまな技法による制作過程をたどることでもある。ジェロームは、当時、既に普及しはじめていた写真に興味を示しながらも、画家としての模写の重要性を芳翠に教えた。
芳翠はフランドランの作品を実寸のまま、少し小さめの画布に模写している。そのため本来描かれるはずの本を持つ手の仕草(しぐさ)は、写し取られていない。背景の暗闇に浮かび上がる女性の肖像を、陰影法の一つである極端なコントラストをつけて描くことで、見る者の視線はうっすらと見える横顔へと向かう。そのため肌と衣服は、より一層輝いて見えてくる。ドラマチックさと透明感を併せ持つこのような表現を得意としていたジェロームが、この作品の模写を勧めたのかもしれない。
ルーヴル美術館公式ウェブサイトのデータベースでは、芳翠が模写したこのフランドランの作品を画像付きで検索することができる。知りたい情報へ自分でアクセスできるようになった今日、こうした情報は、芸術鑑賞に思いがけない想像の機会をもたらしてくれるようになった。皆さんも一度こうした美術館のウェブサイトにアクセスしてみてはどうか。思わぬ発見に遭遇し、新たな美との語らいの場へとつながっていくかもしれない。
(県美術館学芸員・廣江泰孝)
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山本芳翠 日本に「洋画」もたらす - 岐阜新聞
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