今年の夏は長梅雨、豪雨、熱波、強力台風の接近などが相次ぎ、異例ずくめだった。影響を受けた地域は広範囲に及ぶ。極端な高温は日本だけでなく米国や欧州、ロシアでも観測された。長期的な温暖化がどの程度関係しているのか、定量的に評価して効果的な対策につなげる必要がある。
「もし40年前に今夏と同じ大気の流れが起きたとしても、これほど暑くはならなかっただろう」。気象庁で異常気象分析検討会の会長を務める中村尚・東京大学教授は8月20日の検討会後、記者会見でこう述べた。
7月に梅雨前線が活発になったのに伴い、九州各地や岐阜、長野、山形の各県に豪雨をもたらした記録的な量の水蒸気流入は「明らかに異常だった」という。猛暑や豪雨といった「今までにない極端な事象が起きやすくなっていることを念頭に、備えをしてほしい」と呼びかけた。
「今日の大雨」「今週の高温」といった一つ一つの現象は、温暖化が進んでいてもいなくても起きる「自然変動」がもとになっている。偏西風の蛇行が欧州から伝わってきたり、熱帯の上昇気流を促す大気の流れが起きたりする。ある年は別の年に比べて梅雨の雨量が多くなり、蒸し暑くもなる。
だが、温暖化によって自然変動に伴う大雨や高温が従来より極端になっている可能性は高いという。豪雨になりやすい大気の流れが起きると、かつてないほど激しい雨になる。高温をもたらしやすい背の高い高気圧に覆われれば、記録的な猛暑になるといった具合だ。温暖化の影響で降水量も気温も「ゲタ」をはかされた形になり、増幅されていく。
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専門家の多くは、個々の異常気象を温暖化と直結させることには慎重だ。異常気象分析検討会の報告も、以前はそうした姿勢を反映していた。
例えば2013年の猛暑の分析では、1898年以降の長期的な気温上昇や1931年以降の猛暑日の増加傾向に関してのみ「地球温暖化の影響が現れているとみられる」と注意深く記載した。
一方、今年7月の検討会のまとめにおいては「今回の一連の大雨では、地球温暖化の進行に伴う長期的な大気中の水蒸気の増加により降水量が増えた可能性がある」と関連性を明記した。気象を再現する計算モデルや分析手法が改善されて、実態の解明が進んだことが背景にある。
気象研究所は7月3~4日の熊本県などの大雨について、再現実験をした。すると、過去40年間の気温上昇がなかったと仮定した場合に比べ、上昇を織り込んだ場合の方が降水量が多くなった。
大雨や猛暑の発生確率が温暖化によってどの程度高まったかを定量的に評価する手法は、「イベント・アトリビューション」と呼ばれる。
7月の豪雨に関する結果は出ていないが、18年の猛暑については気象研が計算結果をまとめた。温暖化がなかったと仮定すると発生確率はほぼゼロだが、温暖化があるとした場合は2割程度となった。
同年の「平成30年7月豪雨」による降水量についても解析した。それによると、温暖化がない場合に比べて7%近く多いことがわかった。
少し前まで大まかな将来予測しかできなかった温暖化問題が、イベント・アトリビューションの手法によって個別の極端気象と結びつくようになったのだ。確率的な評価ができれば、猛暑や豪雨による災害リスクを見積もり、投じるべき対策費を検討していくのに生かせるだろう。
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猛暑や豪雨がもたらす作業効率の低下、物流の寸断によって推定される損失などの計算と組み合わせれば、企業経営上の気候リスクの評価にも役立つ。ESG(環境・社会・統治)を重視した投資や、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と呼ばれる開示の枠組みとも直結する。
このため、イベント・アトリビューションは世界で競って実施されるホットな研究分野となっている。
米気象学会は2011年以降、極端気象の代表的な事例とイベント・アトリビューションの評価結果などをまとめた報告書を毎年、作成している。世界の事例を集めており、利用価値は高い。
20年に本格運用を始めたパリ協定の下、温暖化対策を確実に進める必要がある中で、日本もこうした事例やデータの収集分析にもっと力を入れるべきだろう。
(編集委員 安藤淳)
[日経産業新聞2020年9月7日付]
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September 07, 2020 at 10:38AM
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