■ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡により、GJ 3470 bの大気の化学特性が初めて特定された
■GJ 3470 bは、純粋な水素とヘリウムでほぼ構成され、他の重元素を一切含まない「原始大気」を持つ
■原始惑星円盤の物質を元に大気を形成しながら、今も恒星のすぐ近くを公転しているパターンは極めて独特
太陽系外惑星グリーゼ3470 b (GJ 3470 b) は、地球のような岩石の中心部と、水素とヘリウムから成る海王星のような大気に囲まれた「ハイブリッド惑星」といわれていた。
しかしNASAの発表によると、どうやらその大気は重元素を含まない「太陽に近い大気」を持っているという。
恒星のすぐ近くを公転しているにもかかわらず、このような「原始大気」を持つ惑星は、少なくとも太陽系には類を見ない。
系外惑星「GJ 3470 b」は、「かに座」の方向およそ97光年先の「GJ 3470」という赤色矮星の周辺を公転している。
GJ 3470 bの質量は地球のおよそ12.6倍で、これは地球と海王星のほぼ中間に相当するものだ。
今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡がタッグを組んでGJ 3470 bの大気を調査。
すると、この天体の大気が独特の化学特性を有していることが初めてわかった。
地球と太陽のハイブリッド? 「原始大気」
天文学チームは2つの宇宙望遠鏡が持つ多重波長を捉える能力を組み合わせ、GJ 3470 bが恒星の前を通過する「トランジット」を12回、恒星の後ろに隠れた際に起きる反射光の減少「星食」を20回、分光器によって観測した。
その結果、酸素や炭素といった重元素を含む海王星と類似した化学組成を持つという天文学チームの予測に反し、GJ 3470 bの大気が実際には太陽に近いことが判明。
つまり、ほぼ純粋な水素とヘリウムで構成され、他の重元素を一切含まない「原始大気」だったのだ。
たとえば太陽は、73%が水素、残りがほぼヘリウムで構成されており、酸素・ネオン・鉄・炭素といった重元素はほんのわずかしか含まれていない。
また、木星や土星といった巨大ガス惑星もほとんどが水素とヘリウムでできているが、その他の重元素に加え、メタンやアンモニアといった化合物も含んでいる。こうした化合物は、GJ 3470 bにはほぼまったくと言っていいほど見られない。
GJ 3470 bが恒星のすぐ近くを公転し、その質量が木星に遠く及ばないことを踏まえれば、その大気が重元素による「汚染」の影響をほとんど受けていないことはとても不思議なことなのだ。
昔も今も赤色矮星のすぐ近くを公転
GJ 3470 bは、他の太陽系外惑星とも明らかに対照的だ。
たとえば、太陽から遠い場所で形成され、後に太陽の近くへ移動してきたと考えられているホット・ジュピターに対し、GJ 3470 bは現在位置する場所とほぼ変わらない「赤色矮星のすぐ近く」で形成されたと考えられている。
GJ 3470 bの起源は、初めに小さな岩石の天体ができ、それが原始惑星円盤の中心に巻き込まれる過程で形成されたようだ。
つまり、その円盤を構成する原始物質から次第に大気を集めたからこそ、ほぼ水素とヘリウムのみで構成された大気を持つに至ったというわけだ。
原始惑星円盤の物質を元にして大気を形成しながら、今も恒星のすぐ近くを公転しているというパターンは、他に類を見ない。
その理由の1つには、GJ 3470 bが円盤から物質をまだ取り込んでいる段階で、恒星が巨大化して円盤が消散した可能性が考えられる。その結果、GJ 3470 bの成長が妨げられ、ガス惑星のような状態に至ったのかもしれない。
宇宙は広いにせよ、太陽系の常識では考えられない異端の存在である。
2021年3月に打ち上げが予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、かつてないほどの精度で赤外線を見ることができる。
ハッブルの跡を担う後継者に、謎の「ハイブリッド惑星」解明への期待が掛かる。
投稿 謎の「ハイブリッド惑星」の大気組成がついに暴かれる は ナゾロジー に最初に表示されました。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5613318
2019-07-08 06:51:35Z
52781804295991
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