ジャガー・ルクルトは、腕に着けたままでケースを反転できる角形時計「レベルソ」で知られるが、1992年に丸形の「マスター・コントロール」を追加した。時計らしくないネーミングだが、これは同社独自の1000時間テストを意味する。すべての故障や不具合は最初の6週間に現れるという経験則から、時計の精度検定では異例の長期間におよぶ厳しい基準を導入し、これをクリアした時計だけを出荷する。ブランドによる独自の品質管理制度の先駆けであり、現在ではレギュラーモデルのすべてが対象となっている。
いわば精度へのこだわりを象徴するコレクションだが、クラシカルなデザインコードを堅持しながらも、コンテンポラリーなテイストを加えてリニューアルされた。とはいっても、外観に極端な違いは見られない。シャープなエッジをもつクサビ形インデックスとドーフィン針は、2面のファセットが陽光を逃さず反射するため、視認性に優れている。ダイヤル面のサンレイ仕上げは逆に眩しい乱反射を防ぐだけでなく、高級感も醸す。刻々と動き続けるブルーのセンター秒針が鮮やかな色彩として、際立ったアクセントになっている。このように時計の王道ともいえる基本的なエッセンスを完全に継承する一方で、全体のデザインバランスを現代的にブラッシュアップしたといえるだろう。
複雑時計の故郷として知られるスイス・ジュウ渓谷の名門だけに、内部のムーブメントは顕著にアップクレード。耐磁性などに優れたシリコン製脱進機を採用した「キャリバー899」は、主ゼンマイを収納する香箱のデザインを変更するなど、省エネルギーのためのさまざまな改良を加えることで、約70時間のロングパワーを実現。週末や祝日などを挟んだ使い勝手の面でも利便性が大幅に向上している。
新開発した退色しにくいピンクゴールドのLe Grand Rose Gold(グランド・ローズゴールド)や、魅力的なパティーナ(経年変化)が生まれるノボナッパ・カーフレザーの採用も要注目だ。技術力に誇りと強いこだわりをもつマニュファクチュールとして、時計通に支持されてきたブランドだけに、こちらも21世紀的なリニューアルと評価したい。大きくなく、かといって小さくも感じない直径40㎜の絶妙なサイズのケースに、ベーシックな3針モデルからコンプリケーションまで揃っているのも魅力。デザイン的なケレン味はないが、それだけにいつまでも見飽きることがなく、末長く愛用できるコレクションだ。
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May 26, 2020 at 07:00PM
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複雑時計の名門「ジャガー・ルクルト」が丸形コレクションをリニューアル。王道のデザインをアップグレード - Pen-Online
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